【それ正しい知識?】年金に関する本当の話 Part6

 

 「終わりのない年金地獄。これから私たちはどうすればいい?」

 

 こんにちは、ミヤムラです。

 これまで年金制度、歴史、問題点と取り上げてきました。

 さて、これから私たちは「払い損地獄」から抜け出すにはどうすればいいでしょうか?

 

 前回の記事はこちらから

 

miyamuramakoto.hatenablog.com

 

 

 

 

6 年金制度の解決策

 

 1 根本的な少子高齢化対策を行う

 

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 これはある意味では有効であるといえますが、爆発的な効果が得られるとは言えません。それでも、現在の40・50代までであったら十二分に効果があるといえると考えられます。

 

 まず年金受給年齢が現在と変わらず65歳である状況を考えます。

 50代が少子化対策を行った場合、その対策・恩恵を受ける新生児が年金を支払う20歳になるころには70代になっています。そのため、現在の50代がおこなう少子化対策がまわりまわって、将来の自分たちの恩恵になります。無論、50代以下の年齢層の人達も少子化対策を進めることで将来恩恵を受けることができます。

 

 

 これにより少子高齢化問題を打破できれば一番であり、根本的問題の解決にもつながるはずです。しかしながら、出生率が急増することはありません。仮に少子化がある程度解決するにしても、高齢者の割合は依然高い割合を維持したままでしょう。さらに、若年人口が増えるにしても、毎年一歳しか歳をとりませんから、財源や社会に与える影響は徐々にしか増加しません。そのため社会全体のことを考えると極めて限定的な効果しか得られず、即効性があり著しい効果があるものとは言えません。

 

 つまり、少子化の解消は年金問題解決の手助けになるとは考えられますが、手助けに
"しか"ならないとも結論づけることができます。

 

 

 

2 年金制度自体の改革

 

 近年であれば、小泉政権のもとでおこなわれた改革が記憶に新しいと思います。ここでは「負担の引き上げ」と「給付カット」がおこなわれました。

 「負担の引き上げ」はその名の通り、現役世代に課す保険料を引き上げるというものです。また「給付カット」も高齢者の受給額を下げるものです。

 

 国や自治体はさまざまな形で年金対策を行っていますが、それは「負担の引き上げ」か「給付カット」のどちらかでしかありません。これは現在の保証制度のように、「現在の現役世代が、現在の高齢者を支える」という仕組みを前提とするかぎり、2つの改革手段しかありません。

 

 

 しかし、これらは一時的な解決に過ぎず、根本的な問題は取り残されたままです。負担引き上げも給付カットもいずれ限界が訪れます。

 保険料の引き上げにより現役世代が負担で潰れるか、給付カットにより老齢世代の生活が維持できなくなります。つまり、一時的な解決に過ぎず、世代間の不公平を是正するものではありません

 

 

 

3 保険料制から消費税制へ

 

 年金の未納・未加入問題が深刻化したため、保険料としての徴収をやめ、全額消費税で徴収すべきという意見もあります。これにより、未納者や未加入者が今まで支払わなかった分のお金が確実に手に入り、年金よりも回収率が断然高いという理由からです。

 

 本来の「年金=保険」という考えの下では、保険料を消費税から徴収するというのは少しずれています。それでも主張されているのは、それほどまでに未納者が多いからなのです。

 

 ここ数年の保険料納付状況を見てみると、納付率は上昇しているものの、平成29年の段階で66.3%という水準で留まっています。

厚生労働省 『平成29年度 国民年金加入・保険料納付状況について』)

 そこには未納者や免除者がいるということも考慮する必要がありますが、仮に全員が納付できる状況がつくれたのなら、一人当たりの負担は大きく減るはずです。

 

  

 しかしながら、消費税化に対する批判もいくつかあります。

 その一つとして、税率制度の設定の難しさがあげられます。人口や経済状況にあわせて消費税を柔軟に変えなければならないためです。現状、保険料は固定されているため、税率は一定であるかもしれません。ですが今後人口が減少し続けるようなら、税率を逐一変える必要が生まれてくるため、消費税による徴収は難しいかもしれません。

 

 次に、消費税は弱者に厳しい税率であるので、年金制度がもつ所得再分配が機能しないという懸念があげられます。

 これに対しては、年金で所得再分配をする必要性がそもそもなく、また年金による再分配は機能していないため、税金による徴収でも問題ないという意見もあります。

 

4 積立方式への移行

 

 そこで賦課方式積立方式に転換するという案があります。Part4でも述べたように積立方式は少子高齢化の影響を受けにくいためです。それは先述してあるように、「自分たちの将来を、現在の自分たちで支える制度」であるからです。他の世代に頼らず、自分たちの世代だけで財政が完結するため、高齢者の影響は受けないのです。そのため、保険料引き上げや給付カットをする必要がありません。

 

 

 さらに、積立方式はリスクに対してのリターンがかけ離れていないというメリットがあります。

 ここで年金制度のもつ「保険」という性質を考えます。保険の原則として、加入者の間で「公平」でなければならないという原則があります。つまり、世代を超えても加入者のリスク・リターンが平等でなければならないということです。

 ここで、賦課方式を見るとリスク(支払い金額)とリターン(受給額)が世代によって大きく異なるという現実があります。現に、リターンに対してリスクが高いという「払い損」という問題が起こっています。

 

 そうした観点からみると積立方式は世代間のリスク・リターンは「公平」であるといえ、本来あるべき「保険」という性質をきちんと持っているといえます。

 

  

 

5 積立方式に移行する際の問題

 

 

 今まで賦課方式を選択していたため、積立方式に移行するためには、ある程度の負担が必要となります。

 つまり移行世代は賦課方式として老齢世代への保険料と、将来の自分たちへの保険料という保険料を二重負担する必要があります。

 

 しかし、そうしてでも改革はするべきだと私は考えます。なぜなら積立方式に移転さえできれば、全ての世代が「払い損」というスパイラルに陥らなくて済むからです。そうであれば国が一時的な負担を背負ってでも現行の年金制度を改めるべきだと考えます。

 

 

また、過去に「払い得」であった世代から相続税として徴収する方法もあります。他国では「クローバック制度」として実施されている例もあるため、導入は困難とは一概に言えないはずです。

 

6 まとめ

 以上を踏まえ、

 

① 少子化対策をするべき

 長期的に考えて少子化対策を進めるべきである。特に50代以下の年齢層は、そういった政策に関心を抱くべきである。

 今後少なくとも50年はこの高齢化と付き合う必要があるため、目先の利益よりも数十年後のことも大切である。

 

② 賦課方式から積立方式に転換すべき

 きちんと準備をしたうえであれば積立方式への転換は十分に可能である。

 できるだけ負担が偏ることのない制度に今すぐ改めるべきである。

 

 

 というのが私の結論です。ここまで読んでいかがだったでしょうか?

 Part1~6までかなりボリュームのある内容となってしまいました。

 年金制度について知らなかったようなこともあったかと思います。これを機に年金制度への関心を高めていただければと思います。

 

 では、次回の記事でまた会いましょう。

 

 

 

 

※ この記事の作成にあたり出来る限り多くの文献・サイトを参考にしたうえで執筆いたしました。十分に注意しているつもりですが、間違った内容であったり、簡略化するために誤解を生むような表現をしている可能性があります。

 疑問点や修正すべき点がございましたら、コメントにて質問・ご指摘お願いいたします。

 

 

(参考サイト・文献)

 

厚生労働省 「年金・日本年金機構関係」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/index.html

最終アクセス 2019年6月8日

 

 

鈴木亘 (2009年) 「騙されないための年金・医療・介護入門-社会保障改革の正しい見解・考え方」 東洋経済新報

唐鎌直義・小澤薫・久昌以明・宮本悟 「どうする!あなたの社会保障 ③年金」 株式会社旬報社

芝田英昭 「基礎から学ぶ社会保障」 自治体研究所

上村敏之 (2009年)「公的年金と財源の経済学」 日本経済新聞出版社