【それ正しい知識?】年金制度に関する本当の話 Part2

 

 

 ちょっと時間がたったと思うと、すぐに取り上げられる年金問題

 では年金年金と騒がれている原因は何なんでしょうか?

 今回は年金の歴史を振り返って、どのような目的で年金制度が確立されたのか、その設立時点で問題はなかったのかを見ていきたいと思います。

 

 

「年金について正しい知識があるの?」ということで、前回のPart1では年金の基本的なことを解説しましたので、読んでない方はこちらをご覧ください。

 

 

miyamuramakoto.hatenablog.com

 

 

 

2 年金制度はなぜ生まれたの?

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1.1 日本の年金制度の歴史

1 日本の年金制度の発祥

 日本の年金制度の歴史は明治時代にまで遡ります。

 この時の年金制度は、陸軍・海軍・高官に対して、恩給として支払われたものです。その後は、国営企業や民間の大企業でも採用され始めましたが、これらも恩給的要素を持っていました。この恩給というのは、高官として勤務していたものが老後に給与を受け取れるようなものでした。

 つまり、初期の年金制度は弱者救済のためのものではなく、上層労働者を優遇するために低所得者から搾取するものでした。

 

 

2 第二次世界大戦前後

 このころになると、ようやく一般労働者に対する公的年金制度が増設され始めました。1941年には労働者年金法(現在の厚生年金にあたるもの)が制定されるなど法整備が進みました。。

 しかし、これは年金というかたちをとってはいましたが、年金支給だけを目的としたものではありませんでした。戦争が激しくなるため、税金だけでは戦費をまかなうことができず、年金制度という形を使って手っ取り早く戦費を調達するという意味も込められていました。

 戦争に勝てば景気が良くなり賠償金も請求できるので、先にお金を徴収してどうにか戦争に勝とうという考えがありました。年金の性質上、実際に支給するのは何十年後かなので、現在借金しても返済は何十年後かに持ち越すことが可能だからです。

 

3 高度成長期にあたって

 

 資金集めという面もありましたが、第二次世界大戦後は実際に年金制度としてしっかり稼働していきました。当時の年金制度は厚生年金のみで、全員が加入する国民年金は存在していませんでした。また、制度としてもまだ未熟なものでした。

 

 その状態でも年金制度が成立していた理由は、高度経済成長の前と後では、日本人のライフスタイルが大きく異なっていたためです。

 

 

 ひと昔の日本は一世帯に、夫婦となる第一世代、その子供の第二世代、さらにそのn子供の第三世代という計三世代が同じ屋根の下で生活をするというのが典型的でした。この三世帯は基本的に第一・第二世代が養っていました。やがて、第一世代が高齢になっても第二世代の力で養うことが可能でした。

 この高度経済成長期前は高齢者は家族内で養う「私的扶養」というかたちが基本でした。そのため全員が年金を受け取らなくても、世帯全員を養うことは可能でした。つまり年金制度を充実させる必要性がなかったのです。

 

 

 しかし、日本の高度成長期に入ると、その環境が大きく変わりました。それまでは地元で暮らしていた若者の大半が、より高い収入が得られる都市部に進出するようになりました。そのため、農村部に若者がいなくなり、三世代で同居している数が減り、核家族が目立つようになりました。その結果、年をとった第一世代を養うひとがいなくなりました。

 

 そこで、家族に頼らず高齢者を養う制度が必要になりました。それが現在の国民年金制度になります。

 

 

 

4 まとめ

 

 もともとは恩給という、元高官の高齢者を優遇する制度が始まりでした。

 それが戦費調達という手段に使われだしたのが第二次世界大戦前後のことです。

  「高齢者を養う」という考えの下で年金制度が進められなかったのは、政治的な問題もあるとは思いますが、そもそも国が高齢者の生活を保障する必要がなかったからです。昔のような大家族という形態では、高齢者を家族内で支えることができていたからです。

 

 

 しかし、高度経済成長などにより核家族化が進むと、「家族が高齢者を養う」ということが難しくなりました。

 そこで、「国が高齢者を養う」制度として、見直されたのが現在の基本的な年金制度の始まりとなります。

 

 

 年金の歴史と意味の変容を見たところで、次は年金に関する誤解と問題点を見ていきたいと思います。

 

 

 

 

※ この記事の作成にあたり出来る限り多くの文献・サイトを参考にしたうえで執筆いたしました。十分に注意しているつもりですが、間違った内容であったり、簡略化するために誤解を生むような表現をしている可能性があります。

 疑問点や修正すべき点がございましたら、コメントにて質問・ご指摘お願いいたします。

 

 

(参考サイト・文献)

 

厚生労働省 「年金・日本年金機構関係」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/index.html

最終アクセス 2019年6月8日

 

鈴木亘 (2009年) 「騙されないための年金・医療・介護入門-社会保障改革の正しい見解・考え方」 東洋経済新報

唐鎌直義・小澤薫・久昌以明・宮本悟 「どうする!あなたの社会保障 ③年金」 株式会社旬報社

芝田英昭 「基礎から学ぶ社会保障」 自治体研究所

上村敏之 (2009年)「公的年金と財源の経済学」 日本経済新聞出版社